【歯科衛生士コラム黒川 綾さん】歯科衛生士の可能性と働き方

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黒川 綾さん

黒川 綾さん

株式会社プラスアルファ代表

フリーランス契約にて衛生士業務
横浜歯科医療専門学校 特任講師
第二種滅菌技士
株)松風DHコース講師
東北大学歯学研究科口腔保健発育学講座予防歯科学分野 修士課程在籍中

2001   第一子出産
2007   第二子出産
2010   スタディグループ+α設立
2013.4   株式会社プラスアルファ 設立
2019.4   東北大学大学院歯学研究科入学

■︎全国各地にてセミナー、講演活動
2015.3   臨床歯周病学会中部支部大会 教育講演
2018.10 第8回国際歯科大登壇
UIC,BORG,AAP,PRD,USC,UCLAなど、海外研修に参加し研鑽を続ける

歯科衛生士の可能性

日本は今、少子高齢、超高齢社会に突入しています。そこで求められる歯科医療の目的は、栄養源の経口摂取のための歯の喪失予防はもちろん、定期的にお会いする患者さんに対して健康寿命延伸の有効性を示す多数の報告を情報提供することだと思います。それはまさに今後の歯科衛生士の業務として期待されていることですし、それは自身の可能性と活躍を大きく広げ、発展をしていくことにもなると考えます。

なぜそう考えるのかと言うと、私が衛生士資格を取得した23年前は、多くのクリニックにおいて、Drのアシスタントを主な業務としていたように記憶しています。でも私は運良く、一日100人前後の来院がある歯科医院で、先輩方がきちんと歯周組織検査から行い、お掃除ではない歯周基本治療を行うクリニックで修行を積むことが出来ました。この経験のおかげで、早い段階から病態変化を起こした歯周組織を改善させるという衛生士のやりがいを持つことができました。また、患者さんにも来院の必要性を理解頂く努力をした結果、長く関われることが実現し、衛生士として患者さんや、クリニックから必要とされるようになったと感じています。

そんな私でも、この10年はそこを基本として、全身の健康に寄与できる衛生士になろう!という新たな目標を持つことができました。
このように歯科衛生士一個人で考えても、変わり行く現状の期待に合わせ目標をブラッシュアップしていけることから歯科衛生士の可能性はとても大きいと思えるのです。

働く環境の重要性

歯科医院で業務を行う上でとても大切なことは、「衛生士として何を求められているのかを理解していること」だと思います。
それは歯科衛生士という職種に限ったことではないのでしょうけれども法律上、歯科医師の指示の下、ディスカッションを行った上での業務を義務つけられている以上、Drの意向や要望を理解していなければ、院長の意向に沿った環境である歯科医院での業務はうまくいきません。それは、患者さんにとっても院長、衛生士双方にとっても幸せとは言えないと考えます。

歯科医院選びのポイントはワークライフバランス

「自身の理想の環境を求め彷徨う衛生士さんからの相談は後を絶ちません」
求人がないのか?いえ、有難いことに歯科医院側は衛生士を求めていて、多くの院長先生、メーカーさんからも「衛生士さんいませんか?」という問い合わせは後を絶たず、歯科医院と求職者のお互いが探しあっているというもどかしい現状が続いています。

それは一体なぜなのでしょうか?母校や、他衛生士学校において、男性の学生も一学年に数名確認しておりますが、まだまだ女性が多い状況です。そのため、女性特有のライフステージによる、ワークライフバランスに影響を受けることはあるにしても、一向に変わらないこの現状の原因は単にそれだけではないと考えます。
それ故に私は、ワークライフバランスを考えた、衛生士としての働き方の提案を自身の会社を立ち上げ展開しています。
内容的には、歯科衛生士として歯科医院で活躍し、患者さんからはもちろん経営側からも求められる知識と技術を持ち合わせた歯科衛生士になることで、歯科医院を探し求め彷徨うのではなく、自ら環境を作り上げ定着していくことを目的としています。

歯科衛生士は技術職です。自身の経験が何よりも確実なエビデンスとなるので、一つの歯科医院で長く患者さんを担当することは何よりも貴重な財産となると実体験から思います。

歯科医院の求人情報は動画から

最初の一歩であるクリニック探しに関しては、情報を取りに行けば得ることができる時代ですが、情報過多というか、不必要な情報も得られてしまうのは不安を煽る結果にもなりかねません。求人する側と求める側がじっくりと時間を掛けてコミュニケーションを取ることができれば一番良いのですが、クリニック見学より前の、最初の一歩は紹介もない状態であれば、せっかくの就活意欲が下がってしまいます。

そんな時に活用できる方法として動画求人があります
動画などで気軽にクリニックの様子を伺い知ることができるという仕組みは応募の意欲に繋がりやすいのではないかと考えます。もちろん動画を見て全てを知ることは不可能ですが、雰囲気だけでも確認すること、求職者それぞれの選択ポイントを先に確認できる有効な手段にもなりますので、今後のスタンダードになると思います。

歯科衛生士としての今後のビジョン

私自身、歯科衛生士として今後のビジョンを聞かれることが多いのですが、今まで、思い立ったら即行動をしていますので、計画的に考え行動するということがなく、いつも答えに困るというのが本音です。
ただ一つ、今に至るまでの行動でいつも軸となっているのは、患者さん、クリニック、私たち歯科医療従事者のみんなが笑顔でいる未来が描けるか否かです。実際にはその後ろに、メーカーさんなどの多くの方の尽力をいただいていますが、実際に表舞台に上がるこの3者の誰もが妥協することなく、笑顔でいることで、この歯科業界が発展することになると考えますので、舞台に上がる3者全ての笑顔が描けるかが重要だと思います。その発展の際には超高齢社会の日本において健康で元気に過ごす高齢者はもちろん、その前段階の年代の方全てが健康で元気にいられるように努めることが歯科衛生士の社会貢献にもなり、最大の予防歯科と考えます。