歯科衛生士 からみる 予防歯科 とは

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歯科衛生士の業務においてやりがいを感じられる仕事は、なんといっても予防歯科ではないでしょうか?
近年では予防歯科に重点を置いている歯科医院も増え、その内容も多岐に渡ります。

今回は歯科衛生士が行う予防歯科の業務内容とその魅力について解説していきます。

日本において成人の半数は年に1回は歯科検診を受診しているものの、約7割は歯周病に罹患していると言われています。実際に診療室で患者様とお話している中で感じるのは、歯周病や虫歯に関する正しい知識が無い患者様が多く、歯科検診を受けるだけで安心してしまっている方が多いことです。

この現状はまだまだ歯科衛生士が患者様に歯周病や虫歯の成り立ちや、どのように予防していけば良いのかということを伝えていけるチャンスだと思います。

予防歯科と一口に言っても、診療室で歯科衛生士が行うプロフェッショナルケアと、自宅で患者様自身が行うホームケアに分かれます。このどちらかに偏るのではなく、両方ともが大切になってきます。

それでは具体的に予防歯科の種類と内容について見ていきたいと思います。

定期検診

一般的に歯科検診は、3~4ヶ月に一回のペースでの受診が良いとされていて、その内容は医院によっても異なりますが、歯周基本検査やブラッシング指導、食事指導、PMTCなどを行います。

診察の結果、特に問題がなければ次回の検診まで通院は不要ですが、虫歯の治療が必要な場合や歯石の沈着が多い場合はその後数回通院が必要になってきます。
ホームケアに関しても困っていることはないかなどをしっかりヒアリングし、その時の患者様の口腔内の状態に合わせたケアの方法や道具の提案をしていきましょう。
虫歯や歯周病以外にも不良補綴物は無いか、歯軋りなどの習癖は無いかも大切なチェック項目です。

成人の患者様の場合はライフスタイルの変化によって口腔内に影響が出ることもあります。定期的に来院してもらうことで患者様自身では分からない口腔内の異変に早く気付くことができるので、定期検診の大切さも歯科衛生士から伝えられると良いでしょう。

小児の場合は本人だけでなく保護者への指導もとても重要で、家族全体で予防に興味を持ってもらえるようにしましょう。特に生え変わりの多い学齢期のお子さんには、食事指導やフッ素塗布なども定期検診の際は行うことが多いです。

リスク検査

患者様の虫歯に対するリスクはどのくらいあるのかを唾液を使ってテストするものが一般的です。

唾液の量や緩衝能、虫歯菌の数を検査し、その結果に合った患者様専用の予防プランを歯科衛生士から提案します。
このような検査は簡単に行える上に数値で提示できるので分かりやすく、患者様のモチベーションにもなり、自分の口腔内に興味を持ってもらえるきっかけにもなるので、初診など通院してから間もない頃に行うと効果的かと思います。

また顕微鏡を使い、実際に患者様のプラークを採取して動いている細菌を見てもらうということを行っている医院もあり、視覚的にインパクトがあるのでおすすめです。

歯科矯正

歯科矯正というと審美的な部分の改善のために行う方が多いイメージかもしれませんが、実は矯正を行うことで虫歯や歯周病の予防にも繋がるのです。

歯並びが良くなることでブラッシングがしやすくなったり、噛み合わせのバランスが取れて歯周組織への負担が軽減されたりと、見た目が良くなる以上のメリットが実はたくさんあるのです。

矯正の方法も近年はワイヤーを使ったものだけでなく、マウスピースを使った矯正、部分的に矯正を行うMTMなど様々な方法があるので、患者様の選択肢も広がっています。

ただし矯正の場合は料金が高額な上、期間も長くかかることが多いので、しっかりとしたカウンセリングが必要になります。
矯正専門のクリニックもあり、そこで活躍している歯科衛生士もいます。

予防歯科における歯科衛生士のやりがいとは

ご紹介した予防歯科の内容は代表的なもので、歯科医院によっては独自の予防プログラムを行っているところもあります。

どの予防歯科においても共通していることは、私達歯科衛生士がとても大切な役割を担っているということです。
歯科衛生士が患者様としっかりとコミュニケーションを取ることで信頼関係を築き、歯科医院が痛くなったから治療をしに行く場所から、定期的に口腔内のチェックを受けて予防をしていく場所に変化していくのです。

近年では患者担当制を導入している歯科医院も増え、一人の患者様を長い期間診ていくことでその方の口腔内の変化にも早く気付くことができ、患者様もより安心感を持って診療を受けられるというメリットがあります。
歯科衛生士として患者様に信頼してもらい定期的に通院してもらうためには、技術面はもちろんですが、それ以上に大切なことは患者様のことを一番に考え親身になる姿勢だと思います。
日々変わる予防歯科の現状を把握し、新たな情報をキャッチするアンテナや、セミナーなどにも積極的に参加して勉強していくことも重要です。

残念ながらまだまだ日本では歯科衛生士の職業としての認知度は低いのが現状ですが、歯科衛生士として活躍できる場面は沢山あると感じています。 その中でも予防歯科は一番歯科衛生士の力を発揮できる分野ではないのでしょうか。

歯科衛生士の皆さんが個々の力を発揮して、お口の健康に少しで興味を持ってもらえる患者様が増えると、結果的に今後の日本における予防歯科の発展に繋がっていくと思います。

まとめ

今回は予防歯科における代表的なものとそれぞれの役割について書かせて頂きました。
これから歯科衛生士としてお仕事をする中で、自分はどんな予防歯科を提供したいかと考えるきっかけになると嬉しいです。

診療室以外でも保健所や企業、保育園や学校などで歯科検診を行ったり、予防に関する講話をしたり、近年の高齢社会では各種老人施設でのニーズも高まっています。

歯科衛生士は赤ちゃんからお年寄りまで、健康なお口で生涯を過ごすための大切なサポート役を担っている、とてもやりがいのある仕事です。

これから歯科衛生士を目指す皆さんも今回の記事を参考に、患者様に喜んでもらえる予防歯科を提供してくださいね。